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TRADITIONAL/FOLK CRAFTS

COLUMN

日本御伝統工芸は、現代では衰退しつつある産業だとイメージする人が多いかもしれません。

確かに、経済産業省が指定する「伝統的工芸品*1」産業に限っては、1983年の統計で5,400 億円だった生産額が、2016年には960億円にまで落ち込んでいます。
(参照:一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会)

背景には、次のように様々な要因があります。

  • ・私たちのライフスタイルが変化したこと
  • ・大量生産が可能な、安くて機能的な商品が広まったこと
  • ・グローバル化によって輸入品が簡単に手に入るようになったこと
  • ・時代のニーズに対応した商品開発や流通経路開拓が進んでいないこと
  • ・知名度が低く、情報が少ないこと
  • ・・・・・・・
  • (参考:経済産業省 2000)

■再び注目される「伝統工芸」

このように、一度は日本人の生活から離れてしまった伝統工芸でしたが、近年、再び注目を集め始めています。

主に途上国の人々や、自然環境への負荷が大きい「大量生産型社会」を見直し、「循環型・自然共生社会」を目指すサスティナブルな流れの中で、高付加価値な商品を求めるニーズが高まっているためです。

日本独自の風土や文化と共存しながら、現代まで継承されてきた伝統工芸の多くは、その地域で採れる素材を用いて、熟練の職人さんによって手作業で制作されています。

日本の伝統工芸を手に取ることは、グローバリゼーションによって均一化しつつある私たちの生活を、より豊かにゆとりあるものにしてくれます。 そしてそれは、持続可能な社会に貢献することにも繋がるのです。

■「伝統工芸」と「ジュエリー」

しかし、敷居の高いイメージがある伝統工芸に、いきなり手を伸ばしにくいと思う方も多いのではないでしょうか。 そんな時、伝統工芸を私たちの手の届く範囲に運んで来てくれるのが、「ジュエリー」です。

今、伝統工芸の素材や技術を用いてデザインされたジュエリーが、多く展開されていることをご存じでしょうか?

「伝統工芸の魅力を多くの人に伝えたい」「素晴らしい技術を次世代に引き継いでいきたい」という想いから、受け継がれてきた伝統を新たな形で継承していくための方法として、ジュエリーの制作に取り組む職人さんやデザイナーさんが増えているのです。

・これからのサスティナブルな社会に生きる私たちに寄り添う、「伝統工芸」としての可能性。

・現代まで大切に継承されてきた伝統工芸の技術を、次世代へと繋いでいく、「ジュエリー」としての可能性。

今まで相容れることのなかった「伝統工芸」と「ジュエリー」が出会ったとき、お互いにとって新たな可能性を生み出す、一つのきっかけとなるのではないでしょうか。

もちろんこれは、日本の伝統工芸に限ったことではありません。

その国の歴史や文化と共に受け継がれてきた、世界中の様々な「工芸品」や「民芸品」に目を向けてみると、今、そして未来を生きるための、新たな発見があるかもしれません。

*1伝統的工芸品

  • ・主として日常生活の用に供されるもの
  • ・その製造過程の主要部分が手工業的
  • ・伝統的な技術又は技法により製造されるもの
  • ・伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの
  • ・一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの

上記5つの項目を全て満たし、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号)に基づく経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことをいいます。

(引用:経済産業省 ホームページ)

参考文献資料

  • 一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会「現状」(2021/03/27参照) https://kyokai.kougeihin.jp/current-situation/
  • 経済産業省「伝統的工芸品」(2021/03/27参照) https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/nichiyo-densan/index.html
  • 経済産業省 伝統的工芸品産業審議会(2000)「21世紀の伝統的工芸品産業施策のあり方について-新たな生活文化の創造に向けて-」 https://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g01117bj.pdf
  • 玄番和惠(2012)「生活文化用品としての伝統工芸の再生~地域住民力・川下戦略・物語価値~」『都市経営研究e (eJournal of Urban Management)』7巻1号。 https://core.ac.uk/download/pdf/35266955.pdf