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MADE IN JAPAN

COLUMN

日本人とジュエリーとの歴史は、世界の国々と比較してみても、とても異質な変遷を辿ってきました。

縄文~古墳時代頃までの日本人は、他の民族と同様に多種多様な宝飾品を身につけ、お守りや自らのアイデンティティを示すためのツールとして使用していました。 しかしその後、飛鳥~江戸時代末期までの約2千年の間、宝飾品を身につけていたという記録や遺品がほとんど見つかっていないのです。

一方で、大陸から伝わった金工技術(金属に細工をする工芸)が独自の発展を遂げ、仏教美術や刀剣類、日用品等の製作が盛んに行われました。

明治時代になると、その巧みな技術を持った金工師たちが宝飾品業へと足を踏み入れ、その後わずか100年で、世界にも劣らない日本の宝飾品産業が確立されていきました。

■日本で盛んに行われた宝石産業

以上のような歴史を辿ってきた日本とジュエリーですが、かつてはいくつかの種類の宝石を国内で採掘することが出来ました。例えば、山梨県では、金峰山周辺の地域で採掘されていた水晶をきっかけに、研磨宝飾産業が発展しました。ジュエリー今昔物語 (山梨県水晶宝飾協同組合ホームページ)

現在でもジュエリーの素材として取り扱われている国産宝石のなかで、日本が世界のトップシェアを誇るのが、海で養殖される「アコヤ真珠」です。

養殖貝による日本の真珠産業は、100年以上の歴史があります。それもそのはず、量産的な真珠養殖の技術は日本で確立され、それ以降、日本の真珠は世界に向けて発信される、代表的な輸出品となったのです。

■真珠養殖業が抱える様々な問題

生産過程で人間の手が加えられる真珠養殖は、環境への負荷が過度にかかってしまうことが様々な問題を引き起こす原因となっています。 実際、1960年代に起きた真珠ブームによる過剰生産は、真珠の品質低下が問題になりました。

まず、アコヤ貝の糞や清掃カスをエサとする植物プランクトンが異常発生し、赤潮を発生させます。次に、有機物が海底にたまることでヘドロとなり、酸素を必要以上に消費することで貝や魚を窒息させてしまいます。さらには、嫌気性細菌が有機物を分解し始め、有毒の硫化水素が発生するなど、海の環境を著しく乱してしまう可能性がある産業なのです。

1996年、原因不明のアコヤ貝大量斃死が日本中の真珠養殖場で多発したことをきっかけに、現在までに全国的な真珠生産量が年々減少しています。

出典 愛媛県庁/えひめの水産統計/真珠養殖/真珠養殖生産の推移(昭和39~平成30年)

https://www.pref.ehime.jp/h37100/toukei/documents/5-2-1.pdf

日本で誕生した真珠養殖の高度な技術は、今後どのように継承され、どのような発展をしていくのでしょうか。

そして、日本とジュエリーとの歴史はこの先の未来、どのように紡がれていくのでしょうか。

参考文献資料

  • 愛媛県庁「えひめの水産統計」https://www.pref.ehime.jp/h37100/toukei/index.html 真珠養殖生産の推移(昭和39~平成30年) https://www.pref.ehime.jp/h37100/toukei/documents/5-2-1.pdf (2021/02/20参照)
  • 鳥飼行博「宇和海における真珠養殖の変遷:地域コミュニティの個人経営体に依拠した内発的発展」『東海大学教養学部紀要』49巻(2018年)、21-91頁。https://www.u-tokai.ac.jp/academics/undergraduate/humanities_and_culture/kiyou/pdf/2018_049/02.pdf (2021/02/04参照)
  • 山口遼(2016)「ジュエリーの世界史」新潮社。
  • 山田篤美(2013)「真珠の世界史 富と野望の五千年」中央公論新社。
  • 山梨県水晶宝飾協同組合「ジュエリー今昔物語」https://yja.or.jp/history/ (2021/02/21参照)
  • 山梨ジュエリーミュージアム「山梨ジュエリー産業の歴史」 https://www.pref.yamanashi.jp/yjm/jewelry/sangyoshi.html (2021/02/21参照)
  • ワゴコロ「金工の歴史と技法」 https://wa-gokoro.jp/traditional-crafts/metalworks/259/ (2021/02/20参照)