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ANTIQUE/VINTAGE

COLUMN

「アンティークジュエリー」とは、ヨーロッパまたはアメリカで100年以上前に制作された骨董的価値のある宝飾品のことです。 その他、制作から100年経っていない宝飾品は、「ヴィンテージジュエリー」と呼ばれ、特に1930年代から70年代頃に制作されたものを指します。 (参考:竹内清乃編 2017)

エジプトやメソポタミア、ギリシャなどの古代文明や、ヨーロッパ各地の民族によって生み出された装身具が、その後のヨーロッパにおける宝飾芸術の起源となりました。

■なぜ、人間はジュエリーを身に着けるようになったのか。

数千年の歴史を持つジュエリーですが、そもそもなぜ、人間は自らの身体を装飾するようになったのでしょうか。

そのスタートは、身体に傷をつける、耳に孔を開ける、皮膚に入れ墨を入れる、歯を抜く、などといった、「身体変工」だったと考えられています。

次の段階に入ると、綺麗な貝殻や動物の牙、鳥の羽根など、手に入る美しい自然物を加工して身に着けるようになります。
(参考:山口遼 2016)

時には、お守りとして。

時には、他人と異なる個性の表現として。

また時には、集団と同化するための道具として。

原始の時代から人間は、自らの身体を装飾することにこだわりを持ってきました。

■ヨーロッパの歴史との深い関わり

ヨーロッパの歴史と共に特徴を変化させてきた「アンティークジュエリー」のデザインは、当時の時代背景や文化、芸術運動などを反映しており、いくつもの様式*1に分類することが出来ます。

その時代に活躍した職人によって、何年、何十年と長い年月をかけて制作されたジュエリーは、現代の技術では生み出すことが出来ない、独創的なデザインが魅力の一つです。

ヨーロッパの上流階級の人々や富裕層が、自己顕示のために身に着けていた宝飾品。 現代に生きる私たちは「アンティークジュエリー」として、その価値を賛美し続けています。

■現代における「アンティークジュエリー」の価値

これから先の未来、どんなに時代が変わり、科学が進歩しようとも、「自らを装飾したい」という人間の本能が消えてしまうこと。 そして、ジュエリーを含む、様々な芸術活動を人間が絶つことは、無いといっても過言ではないでしょう。

欧米の人々が辿ってきた軌跡を体現する「アンティークジュエリー」。

サスティナブルな社会で生きていく私たちに、歴史を遡って過去に想いを馳せる機会と、未来のジュエリーがどのように展開していくのかについて考える、きっかけを与えてくれます。

さらには、「本物」の美しさと、長く愛し続けることの尊さを教えてくれる貴重な存在でもあるのです。

*1いくつもの様式
アンティークジュエリーは、制作された時代によってデザインの特徴に多様性があります。 代表的な様式としては、「ジョージアン」「ヴィクトリアン」「エドワーディアン」「アールヌーヴォー」「アールデコ」の5つが頻繁に取り上げられます。なかでも、「アールヌーヴォー様式」は、1870年代からヨーロッパに登場した日本美術の影響を受けており、左右非対称の構成や曲線、漆や蒔絵などの技法を用いたデザインが印象的です。この芸術運動は、1895年頃から1910年頃まで、フランスとベルギーを中心に起こったとされています。 (参考:山口遼 2005)

参考文献資料

  • 竹内清乃編(2017)「別冊太陽 アンティークジュエリー美術館」平凡社。
  • 山口遼(2005)「すぐわかる ヨーロッパの宝飾芸術」東京美術。
  • 山口遼(2016)「ジュエリーの世界史」新潮社。